2026.02.22·中村 拓海
器について — 和楽が選ぶ骨董の魅力
器骨董日本料理

料理人になって十八年目を迎えた私が、ここ数年で最も深くのめり込んでいるのが、骨董の器です。和楽では、先付用の小鉢は江戸時代後期の古伊万里、お造りの平皿は昭和初期の北大路魯山人写し、食事の飯茶碗は現代作家・青木亮の信楽、というように、時代も産地も混在した器使いをしています。
骨董の器が好きな理由は、そこに『時間の層』があるからです。百年、二百年という時間を経てなお使われ続けている器には、新品にはない柔らかさと深さがある。貫入(かんにゅう)と呼ばれる釉薬表面の細かなヒビに、お茶の色がしみ込み、白磁が薄く黄色味を帯びていく。その経年の表情こそが、料理を『今この瞬間の出来事』として引き立ててくれるのです。
器の選び方にルールはありませんが、私が守っているのは『料理より器が目立たない』ということだけ。焼き物の赤い鱗肌には、釉薬のおとなしい白磁を。お椀の透明な出汁には、漆の艶を抑えた根来塗を。主役はあくまで食材で、器はそれを支える舞台です。
京都・粟田口、東京・西麻布、金沢・ひがし茶屋街。仕入れ旅で巡る骨董店の話は尽きません。もし器にご興味を持っていただけたら、ぜひお声がけください。その日お出しした器の産地や時代を、料理と一緒にお話しさせていただきます。